サトシと 伝説 ポケモン小説

7 of the novel series "伝説の御子 サトシ".

"伝説を魅了する(ポケモン)" is episode no. 概要. 設定 ・サトシはデントとアイリスと旅をしている ・サトシはポケモンに好かれる ・そのせいで危ない目に遭う ・サトシには伝説も幻も無い ・ただサトシが愛されていることを書いたもの それで良けれ … "波導伝説の遺跡" is episode no. 総合評価:-11/評価: レッドとして生まれ変わったのでポケモン世界を旅するお話。なお、彼が思っているポケモン世界とは少し違うようで……。▼※本作品は「ポケットモンスターSPECIAL」を元にしたストーリーです。▼ 「なんなの、あのポケモン…」  凍える身体を摩るのを我慢し、ピンク色のポケモン図鑑を取り出したヒカリは画面に表示された『ERROR』の文字に驚きを隠せず、ポツリと呟く。シンオウリーグスズラン大会準決勝もいよいよ大詰めという場面で現れた謎のポケモンに会場は沈みかえっていた。マントの下にカイロを貼って防寒対策を万全に済ませているタクトと心の熱さが身体の発熱にも関係しているのか半袖でも一向に震えを見せないサトシのみが平静さを保っていた。  「こいつはキュレム。イッシュ地方の伝説のポケモンさ」  「イッシュ地方…?」  聞いたことも無い地方だとサトシは首をかしげる。  「まぁここからは距離があるしね。けれど、いいところだよあそこは」  バトルのことは忘れてイッシュ地方の思い出を振り返るタクト。観覧車に大きな橋とパンフレットを入手すれば得られる観光スポットとキュレムのいたジャイアントホールくらいしか行っていないものの、彼にとってはいい思い出に変わりはない。  「さて、決着をつける前にルギアには退場して貰おうか」  ニヤリと微笑んだタクトは手のひらを前に突き出し、キュレムへと命令を下す。  「キュレム、こごえるせかい」  「ヒュオオオオオオ!!!」  キュレムの周囲に冷気が集まっていき、こごえるかぜの比ではない威力を悟ったサトシはルギアへと回避命令を出す。ルギアは空へと高く上がろうとするも、急激に冷やされた温度によるものか、彼の羽根はわずかに凍りついており初動が遅れる。それでもキュレムから大きく離れたルギアは羽を絶え間なく小刻みに動かすことで氷を溶かそうとする。  「だが無意味だ」  こごえるせかいとはその名の通り、その一帯の空気を凍りつかせる。目の前のポケモンどころか、トレーナー、果てには観客にも被害が及びかねない技である。  「危ない!」  「ちっ!」  その危険性に気づいたシロナとシンジは腰に付けたモンスターボールを掴み空へと放り投げる。シロナが出したのはルカリオ、シンジはブーバーンを繰り出す。  「皆さん!ほのおタイプ、またはまもるを覚えているポケモンを出してください!急いで!」  チャンピオンとして、このバトルを見守る者としてキュレムを止めるべきなのだろうが、能力が未知数な上に、自分の相棒にとって驚異でしかないタイプを持っているためそれも叶わない。ならば、せめて死傷者が出ないようにとシロナは声を張り上げる。チャンピオンの言葉を聞いた観客やトレーナー、更には大会関係者はほのおタイプやまもるを覚えたポケモンを出すとキュレムのこごえるせかいに備えた。───────そして。               ###   「る、ルギア!戦闘、不能!」  カチカチと歯を鳴らしながらもルギアが倒れたことを知らせるべく審判は声と共に旗をあげるが、会場からは盛況が漏れることなく、ただ凍りついた空気だけが流れる。空にいたにも関わらず問答無用とこごえるせかいが炸裂し、氷に覆われたフィールドへとルギアは倒れる。空気が静かに爆発したかのような衝撃を持ったその一撃はシロナの予測通りサトシや他の観客達へと僅かながら襲いかかった。だが、シロナの指示と観客側の素早い対応が功を奏し、死傷者は出なかった。しかし、ほぼ目の前にいたサトシはどうだろうか。こごえるせかいにより発生した白い霧からはサトシが立っていることは分かっても、それが凍りついて身体が動かず直立不動立ちになっているのか離れた観客席からは分からない。  「サトシ!」  ヒカリやタケシが呼びかけるとその影はサムズアップし、身体の無事を伝える。その姿に2人はもちろん、シロナや観客席の人間も安堵する。しかし、何故無事だったのかという疑問を起こり、目を凝らしてサトシの姿を目視しようとする。  「ありがとなルギア」  至極穏やかな声でルギアに労いの言葉を向けたサトシはモンスターボールを仕舞い、次のポケモンを出すかと思いきや、タクトへの目線を向けた。その目はタクトへの疑いの目だった。ルギアを倒すだけなら威力を抑えたふぶきやれいとうビームなどでも良かったはずだ。しかし、タクトはあっけからんとしており、サトシへと疑問を投げかけた。  「真正面にいたのにどうして震えていないんだい?」  「それは私が飛び出したからだ」  その瞬間、サトシを包んでいた霧が蒸発するかのように晴れていく。すると中から現れたのは凍傷一つ負っていないサトシと赤い光輪のようなものが腰にある首の長い流暢で尊大な声を轟かせるポケモンであった。のようなものが腰にある首の長い流暢で尊大な声を轟かせるポケモンであった。  「ありがとうアルセウス。おかげで助かった」  「構わない。大丈夫か?」  「あぁ、この通りさ」  笑ってぶんぶんと肩を回すサトシに彼の隣に立つポケモンも微笑みを向ける。そのポケモンに全く見覚えのないタクトは眉を顰めるが階段から走って降りてきたシロナはフェンスギリギリまで迫るとそのポケモンを見上げた。  「あ、アルセウスですって!!!?」  「ち、チャンピオン!?」  「チャンピオンはあのポケモンを知ってるんですか?」 「えぇ、もちろんよ!ある伝承では、1000本の腕から宇宙を作ったとされ。またある伝承では、宇宙がない頃に何も無い場所から生まれたとされ。そして、この世界全てを作ったと言われている幻、いや神に等しいポケモン。シンオウ地方に伝わる伝説のポケモン、時を司るディアルガ、空間を司るパルキアを生み出したとされ、さらにはアグノム、エムリット、ユクシーも彼によって生み出されたという伝承もあるわ」  近くに座っていた観客に尋ねられ、考古学者の知識を早口で熱弁にさらけ出すシロナに周りは少しばかり引き気味である。それにこれだけでもとんでもない存在であるが、シロナの知らない話で地球を破壊するほどの物量を持った隕石をたった1匹で破壊するなど、その力はまさに頂点にふさわしいポケモンなのである。そんな手が届くはずのない存在が、今目の前にいる。その現実にシロナは幼い少女のように目を輝かせる。  「…なるほど、君も僕の知らないポケモンを持っているわけか」  そう呟いたタクトは「さぁ決着を付けよう」とマントを翻す。それは勝つのは自分だと自信満々に誇っているように見える。だが、見る者が見ればそれは蛮勇である。  「あぁ」  サトシは再びタクトに向き直ると帽子を深く被り直す。準決勝、6体目同士。これで決着がつく。だが、アルセウスを知る者にとってはすでに勝敗は決していた。  「キュレム!れいとうビーム!」  普通のこおりタイプのポケモンが放つ威力とは思えない冷気を込めた光線がアルセウスを襲う。しかし、皮膚を太陽の如く燃やしたアルセウスには効いておらずタクトは「ほのおタイプか…ならば」と次の指示を出す。  「キュレム!りゅうのはどう!」  今大会でタクトが最も多く使用した技であり、今大会1番の規模を持つエネルギーがアルセウスへと放たれる。しかし、その一撃が当たる前に光輪をピンク色へと変化させたアルセウスはその攻撃を直撃で受けるも全く効いていない。  「ば、馬鹿な……ほのおタイプにドラゴンタイプの技は抜群でなくとも直撃ならダメージが……」  驚愕の表情で目の前のポケモンを見つめるタクトは再びキュレムにりゅうのはどうを撃たせる。だが、結果は同じでアルセウスは1ダメージも受けていない。  「私の中には命の源と呼ばれる16の力がある。その中に最近、この少年と出会って数日経った頃に一つ、命の源が加わった」  それは妖精の命───────後にフェアリータイプと名付けられるものであった。アルセウスやサトシ達も知らないタイプであり、ドラゴンタイプを無効にする力である。アルセウスは炎の命、妖精の命を用い、サトシを守り、さらにはキュレムの攻撃を全て受け止めた上で無効化してみせた。  「ば、ばかなありえない。そ、そんなこと……」  アルセウスの話を聞いたタクトは膝を着いた。そんなのまるで神ではないか。そのつぶやきは声に出ることはなくても、タクトの表情が物語っていた。  「サトシ、少し時間を貰っても良いか?」  「え?うん。もちろん、俺のわがままに付き合ってもらったし」  「そうか。ありがとう」  サトシに断りを入れたアルセウスは自分を見上げるタクトへと目を向けた。  「タクトと言ったな。全国各地から伝説や幻のポケモンを手に入れた手腕は見事という他ないだろう」  何を言われるのかと身構えていたタクトに送られたのは賛辞であった。あまりに唐突な褒め言葉にタクトは首肯する。  「だが、彼らには彼らのやるべきことがある。それを己の都合だけで捕まえるのは言語道断だ」  しかし、次に紡がれた言葉はタクトを咎めるものであった。  「彼らがいかにして伝説や幻のポケモンと呼ばれているのか。彼らには歴史に名を残すだけの力があるからだ」  人や普通のポケモンを凌ぐ力はもちろん、天変地異、時を超える、願いを叶える、宇宙空間を生きる、空間を歪める、反転世界を統治する、勝利をもたらす……。それらの当たり前から程遠い魔法や奇跡に等しい力を持つからこそタクトやサトシが使ったポケモンたちは伝説や幻と呼ばれている。  「そして、彼らには役目がある。争いをおさめる矛であり盾になる。海や空を守る。街を守る。その在り方はそれぞれだ」  ルギアが海の神と呼ばれていたり、ラティオスとラティアスが守り神と呼ばれているのはそれだけの理由がある。海の神と呼ばれるルギアがいなければオレンジ諸島の海は大荒れとなり、ラティオスとラティアスがいなければ悪意ある人によっては街は滅ぼされていたであろう。  「お前が捕まえたレックウザやレジギガスにも果たすべき責務があったのだ」  「け、けど、それは、あ、あいつも!」  震えた声でサトシを指さしたタクトにアルセウスは目力を強めた。  「サトシには私達から協力を申し出たに過ぎない」  だからお前と一緒にするなと目が語っており、その威圧感にタクトは尻もちを着いた。  「手に入れた経緯は聞かない。正攻法だろうが非道であろうが、その入れ物に入ったのは彼らだ。咎めはしない」  けれども、  「悪夢を見せるダークライや宇宙から来たデオキシス以外にはやるべきことがある。ラティオスには守り神として。レックウザには空の王として。レジギガスには神殿を守る者として。キュレムにはあの一帯を守る義務がある」  だから解放しろと、それを伝えるべくアルセウスはここまで待ったのだ。最初は手っ取り早くアルセウスのみでタクトを蹂躙するつもりだった。けれどサトシは自分達と戦いたいと、純粋で眩しい尊い気持ちをぶつけてくるのだ。それを無下にするならば、アルセウスは神と呼ばれる器を得てはいなかっただろう。そうして、サトシの願い通り最後まで戦い抜きアルセウスはその身を晒したのだ。最も、タクトがサトシにも攻撃を当てようとしたことで、サトシが出すよりも早く出てしまい!かなり怒りを燃やしているが元気そうなサトシを見てそれも和らいだ。  「この世に生まれてきたからには生きる理由がある。やるべきことがある。それを分かってくれ」  先程とは違った、諭すような穏やかな声のアルセウスにタクトは少し間を置いてゆっくりと立ち上がりじっとこちらを見つめるキュレムを見た。確かにダークライやデオキシスと比べるとキュレムやレックウザ、レジギガス達は捕まえにくかったように感じる。それは彼らがそこから離れられない理由があったからなのだろう。  「現に彼らがいない事で大型の鳥ポケモンやジャイアントホールのポケモン達が暴れている。それをおさめるために私が毎回赴いて裁きを与えるわけにもいかないのだ」  「……わかった。ダークライとデオキシス以外は元の居場所に帰ってもらう」  渋々といった様子で頷いたタクトにアルセウスとサトシの表情が和らぐ。  「ならばよい。私の役目はここまでだ」  アルセウスはサトシの方へと目線を向ける。すると、サトシは審判に向かってこう言った。   「俺、棄権します」   ###   「オイオイ!どういうことだよサトシ!」  「そうよ!あと少しなのよ!?」  「お前、ふざけているのか!!」  審判に向けて棄権する旨を伝えた時、飛んできたのは疑問と罵声が混じった知り合いからの言葉の嵐であった。  「サトシ、一体どうしたんだ」  これには1番長く旅を共にしてきたタケシも困惑していた。セキエイこうげんでの敗退での雪辱から今までポケモンリーグで優勝することを目的としていたことをよく知るタケシはサトシがあと一歩という所まで来たというのにそれを投げ出すのが納得できなかった。それは彼とバトルをしたシンジやジュンも同じである。   「いや、ここまで来れたのはアルセウス達のおかげであって、俺の力じゃないからさ」  そう言ってサトシはアルセウス、ピカチュウを見て、そしてモンスターボールの中で休む仲間達を労うようにモンスターボールをさする。  「もし、ミュウツーが来なくて、あのままのメンバーで行ってたらきっとキュレムの姿は見れなかっただろうし」  ポリポリと頬をかいて笑うサトシにタケシは言葉を失うもヒカリは口を開いた。  「でも、みんなが来てくれたのはサトシだからでしょ?だからこれもサトシの力なんじゃないかな!」  「……ありがとヒカリ。でも決めてたことなんだ」  ミュウツー、ラティアス、ギラティナ、ピカチュウ、ルギア、アルセウス。こんな夢みたいなメンバーで戦えるのは今回だけ。ならば存分に楽しんでそのあとは素直に敗退を認めようとサトシは心に決めていたのだ。   「タクトさんは自分でゲットして、自分で育てたポケモンでここまで来たんだ。それを今回だけみんなの力を借りて何もしてない俺が決勝に行くのはダメだと思うんだ」  サトシはそう言ってヒカリ達から背を向けるとタクトへと瞳を向けた。  「タクトさん本当にありがとうございました。今日のこと、俺は絶対忘れません!」  「……待てサトシ」 そう言って深くお辞儀をしたサトシはトレーナーが立つ位置から離れて、スタジアム内部へと姿を消そうとする。しかし、それをアルセウスが止めた。  「お前の潔さは褒めるべき美徳だ。お前のおかげで私はまた人を信じることが出来た。改めて礼を言おう」  「え、あ、うん。なんか照れるな…」  「そして、これはその返礼だ」   首をかしげるサトシにアルセウスは自分が現れてから雲ひとつなくなった晴天の空を見上げる。  「人にはお前のように心優しくポケモン達に愛を向ける者もいれば、己の私利私欲のためにポケモンを手に入れる不届きな者もいる」  そう語りながらアルセウスの頭部にエネルギーが集中していく。   「私はそのような者が許せない。だから、タクトがそのような人間でなかったことを本当に心嬉しく思う」  なお、エネルギーの集中は止まらず、サトシやタクトは一体何を見てるのかとアルセウスが見やる方へと視線を向ける。  「しかし!コソコソ隠れて!我々が疲弊したところを狙い!ポケモンを奪おうとする下賎な輩には!私、自らさばきを下してやる!!」  怒号と共に繰り出されたさばきのつぶては何も無いはずの空で爆発し、その場所からは黒煙が上がる。すると、狼煙からどんどん黒い巨大なコンテナのような巨大な船が現れる。その船をサトシは知っていた。  「まさか!」  シンオウ地方に来て、何度も遭遇したロケット団よりもどす黒い悪に染まったポケモン強奪、捕獲、売買を行う集団。そして、狼煙からボーマンダに乗って現れたトレーナーを見てサトシは叫んだ。  「J!!」  シンオウ地方ポケモンリーグ準決勝はサトシの棄権で幕を閉じるかと思われたが、アルセウスの一撃により姿を現したポケモンハンターJ。彼女の目的は?そして、ポケモンリーグは一体どうなってしまうのか…   ……To be continued

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